Tuesday, May 16, 2006

コラム「ある映像作家のこだわり」(高等学校教科書)




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( text )

コ ラ ム
ある映像作家のこだわり
●「デジタルカケジク」
 2004年12月31日,アテネのアクロポリス内にあるヘローデス・アティスコ音楽堂に不思議な光が投影された。「デジタルカケジク」と名づけられたこの光のアートは,長谷川章さんが発案した作品である。
▲デジタルカケジク
 デジタルカケジクは,静止画と静止画の間を,コンピュータプログラムによって補完し,夕陽が沈むときのように,ゆったりと変化していく作品である。城や神社などさまざまな場所にプロジェクタで投影することで,見る人は,建物や大自然そのものがもつ確かな存在感と,しかしそれがうつろいゆくさまに身をゆだね,思い思いの情感を心の中に描き楽しむことができる。
●たった一人で4000本もの映像を制作
 石川県小松市の郊外にスタジオを構える,映像作家の長谷川章さんは,テレビ番組のタイトル映像やCM映像などを,30年間で4000本も世に送り出してきた。作品は芸術作品としても認められ,世界各国から高く評価されている。
 長谷川さんのスタジオには,ディジタル化され,コンピュータで管理されている,膨大な数の映像素材がある。いざ制作の依頼があ
れば,要望を聞きながら素材を組み合わせ,完成に近い形をその場で依頼者に見せることができるという。
●メッセージを持たない表現
 一般的にCMは,消費者に商品の良さをアピールしようとする。しかし長谷川さんは,メッセージ性を排除することにこだわる。映像をきっかけとして何かを感じとるのは,あくまで見る側だからだと言う。実際,彼の作品からは,明確なメッセージは読み取れない。しかし「あっ」と思わせる独特の雰囲気がある。
 長谷川さんのこだわりは,映像そのものがもつ制約にも及ぶ。映像につきまとう「はじまり」と「終わり」という時間の制約が,見る側をも制約すると考えたのである。
 「時間に拘束された現代人に自分の『間』を取り戻して欲しい。」
 デジタルカケジクは長年の映像制作の経験の中で感じた疑問や違和感に対峙し,見る側にゆだねた表現にこだわり続けた結果として生まれたものだろう。
 「時間に縛られず,ゆったりとうつろう様子を見ていると,そこには自分の『間』が生まれます。情報自体にメッセージはありません。それはあなたが開くことではじめてあなたの中に存在するのです。」
▲長谷川章さん

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